研究内容

環境放射化学

 河川・湖沼・沿岸域の水環境における物質動態に関する研究を行い、河川水流域と海洋沿岸域を1つのシステムとして考えて評価する流域圏環境学を展開。放射性核種および安定同位体比を物質動態のトレーサーとして活用し、移動する物質の起源推定や移行挙動、並びに滞留時間といった時間軸の組み込んだ物質循環像を構築することが目的。有機—無機両方の側面から固液海面での微量元素の吸脱着反応を定量的に明らかにし、ミクロとマク ロの視点を繋げて評価。


複数の放射性核種をトレーサーとした日本海の物質循環の解明

 化学処理法の確立、低バックグラウンドガンマ線測定法の適用により、従来の1/10から1/100 (10-50 L)の海水量で、供給源、半減期および地球化学的挙動の異なる複数の放射性核種(溶存性の226Ra、228Ra、137Cs、134Cs、7Be、粒子吸着性の228Th、234Th、210Pb)の同時測定を可能とした。これら核種の水平・鉛直分布に注目することにより、日本海、さらにその出入口に位置するオホーツク海、東シナ海の三縁海における物質循環を明らかにする。

 1) 226Ra、228Raをトレーサーとし、東シナ海での大陸側浅層海水と黒潮海水との混合、日本海表層での海水循環、オホーツク海および太平洋への流入パターンを解析する。例えば、日本海表層の228Ra /226Ra比の高分解能分析より、対馬暖流の沿岸・沖合分枝、それら混合分枝における大陸側浅層海水の混合比 (それぞれ、8%、16%、11%) を見積もった (図.1)。さらに、各縁海での226Ra、228Ra、137Cs、7Beの鉛直分布より、海水の鉛直循環 (深層海水の滞留時間など) を明らかにする。
2) 日本海を中心とした三縁海における粒子反応性の228Th、234Th、210Pb濃度の水平・鉛直分布および季節変動より、海水中の粒子、さらには粒子吸着性成分の挙動を探る。特に、核種固有の半減期を利用した粒子循環の時間軸 (例えば粒子の滞留時間) の設定は、放射性核種以外の手法では不可能である。
3) 日本海およびその近辺海域における、海水、堆積物の福島原発事故起源の134Cs、137Csの汚染レベルとその分布を調べる。その結果より、134Cs、137Csの供給・循環プロセスを解明する。